変わる自分、変わる関係
時が経つにつれ、人間は変わっていきます。また、それにともなって、パートナーとの関係が変わることもあります。
結婚することになった相手も、もとをただせば他人でした。お互いの存在に慣れ、家族になっていく過程で、ふたりの関係性が変わっていくこともあるでしょう。
例えば、私は夫と出会うまでは、「どうしても子どもが欲しい」とは思っていませんでした。でも夫のほうに子育てを経験したいという希望があったので、まず一人産んでみて、そのあとのことはそれから考えよう・・・と話し合っていました。
結婚前の私に誰かが「いずれは3人の男の子のママになるよ」なんて教えてくれていても、そんなことあるはずないじゃないと思っていたことでしょう。
人との関係性の中に生きる私たち
結婚したパートナーと一緒に住んでいる場合、お互いに与え合う影響の度合いはかなり高い関係と言えます。でもそれほどの濃さはなくても、人は常に他の人から影響を受けて生きている動物だという気がします。
実際に友達や同僚、知り合いといった、現実世界でお互いに知っている人同士はもちろん、例えば本やブログなどである人の書いた言葉に影響されることもあるでしょう。それは音楽や写真といったさまざまな形での芸術作品なども同様かもしれません。
私はハリー・ポッターのシリーズが大好きなのですが、あの世界で生きるキャラクターたちの行動や言葉の数々に心を動かされたことも一度や二度ではありません。間違いなく私は「ハリー・ポッター・シリーズ」と親密な関係を築いています。
既にこの世にはいなくても、その人が語ったり書き残したりした言葉が今に生きる人々の指針になっているという例はいくらでもあります。「神」という抽象的な概念さえそうです。夫と知り合った当初、敬虔なクリスチャンである夫の弟が、夫に対して “What is your relationship with God?”と言っているのを聞いて、神様と個人的な関係があるかのような言い方をするんだなぁと驚いたのを覚えています。
自分も誰かの人生に影響を及ぼしている
英語で “touch someone’s life”という言い方があります。亡くなった人について “He touched so many lives in a positive way”と言えば、「彼は多くの人にポジティブな影響を与えた」という意味になります。また、見知らぬ人の思いがけない親切にとても嬉しくなったという経験をすると、“Her kindness touched me”と言ったりします。
夫と私には新婚当初サンディエゴで暮らし始めたときにお世話になっていたLarryというカウンセラーがいました。何か揉め事があって二人だけでは解決できないとき、いつも “We need Larry”と言ってアポイントメントをとって、相談しにいっていたのです。
結婚10年ほどたったある日、再び「Larryと話したほうがいいかな」という状況になってコンタクトを試みたところ、そのときに彼が病気で亡くなっていたことを知りました。
新婚1年目こそ何回かセッションで会っていたものの、その後はその時までまったく連絡をせず・・・またそのときにLarryと話したいという状況が起こらなければ、きっと彼が亡くなったことも知らないままサンディエゴを去っていたでしょう。Larryはきっと本人も知らない間に、とても多くの人の人生に影響を与えていたに違いないと思います。私が今の仕事をしているのも、彼との出会いがあったことが少なからず影響しているのですから。
完全に自立して誰にも頼らず、一人で生きているかのように思っている人だって、誰かしら・何かしらとはrelationshipを結んでいる・・・それが人間の本質なのかもしれません。
No Man Is an Island.
人間関係で悩んでいたり、孤独感にさいなまれたりしている人には、是非この言葉を思い出してもらえたらな・・・と思います。