ハロウィンの出来事

”Trick or Treat”

私は日本で生まれ育ったので、大学卒業後にアメリカに留学するまでハロウィンを祝う習慣とはほぼ無縁でした。

子どもの頃、アメリカという外国のお祭りであるハロウィンについて最初に知ったのは、小学生の頃に大好きで繰り返し読んでいた「ゆかいなヘンリーくんシリーズ」という物語の本でした。クリアリーという作者のこのシリーズでは、主人公の少年ヘンリーのまわりで毎回いろいろな事件が起こります。

ハロウィンの季節のエピソードでは、合言葉の”Trick or Treat”が「いたずらかごちそうか」と訳されていたのが印象に残っています。本にはまた「お菓子がもらえなければ、窓に卵をぶつけるなどいたずらをしてもよい」と注意書きが書かれていたので、「お菓子を用意しないと、子どもたちに本当に何かされるのかな」と思っていましたが、実際にアメリカに住んでみてそうではないとわかりました。”Trick or Treating”に参加しているのは、ハロウィンの装飾をしている家という暗黙のルールがあるようです。Facebookでも、ハロウィン仕様の飾りをつけた家の写真があがっていますが、これらの家のホストは子どもたちが来たときに怖がらせるような仮装の準備も万端といった感じです。

忘れられない出来事

ハロウィンといえば、忘れてはならない出来事があります。ハロウィンのパーティに出かけたところ、間違った家に行ってしまった日本人留学生の服部剛丈くんが射殺された事件です。下記がWikipedia掲載の事件の概要です。

1992年10月17日、ルイジアナ州バトンルージュにAFSを通じて留学していた日本人の高校生、服部剛丈(はっとり よしひろ、当時16歳)が、寄宿先のホストブラザーとともにハロウィンのパーティに出かけた。しかし、訪問しようとした家と間違えて別の家を訪問したため、家人ロドニー・ピアーズ(当時30歳)から侵入者と判断されてスミス&ウェッソン社製の.44マグナム装填銃を突きつけられ、「フリーズ(Freeze「動くな」の意)」と警告された。しかしながら服部は仮装の際にメガネを外していたため状況が分からず、「パーティに来たんです」と説明しながらピアーズの方に進んだところ、玄関先、ピアーズから約2.5mの距離で射殺された。

服部くんはAFSという団体を通してアメリカに留学していました。私も高校時代に同じ団体の交換留学生としてドイツに1年間滞在しており、この事件が起こった1992年から大学生ボランティアとしてAFSで活動していたため、この事件には大きな衝撃を受けました。

ボランティア仲間の中には、事件の犠牲者となった服部くんと、出発前オリエンテーションなどのグループで一緒だった人もいて、私たちにとってこの事件は単なる新聞やテレビを一時賑わせたもの以上の意味がありました。

この事件が起こった時点ではまだアメリカを訪れたことがなかった私は、一般の家庭でも銃を携帯している可能性があるということをいやでも実感させられました。

またその後の陪審員裁判で、発砲した男性が無罪になったことにとてもショックを受けたことを今でも覚えています。海外ドラマを通じてアメリカの司法制度について多少なりとも理解するのはずっと後になってからのことでした。

事件後には、アメリカの銃規制を強化するための運動が起こり、確か、ニューヨークのタイムズ・スクエアに「銃で死亡する人の数」が表示される電光掲示板が設置された時期もあったと記憶しています。

銃による悲劇が減らない国

近年、アメリカで銃による犯罪のニュースを聞くことは珍しくなくなってしまいました。数日前にも、フィラデルフィアのシナゴーグでユダヤ人をターゲットにした銃乱射事件が起きたばかりです。あまりにも多くの銃乱射事件が起こっているため、服部くんの事件について知るアメリカ人はもうあまりいないのではないかと思います。

事件のあとに「悲劇を繰り返さないためには文化の違いを乗り越え理解を深めていく必要性がある」として、銃のない安全な日本社会を体験してもらうため米国の高校生を年に一人ずつ招こうという趣旨で設置されたYOSHI基金(Yoshi Hattori Scholarship)は今でも続いていて、この時期に奨学生の選考が行われます。私もアメリカに住んでいた時は候補者の電話インタビューをお手伝いしていました。

“Have a Safe Halloween”という挨拶を聞くたび、この事件を思い出します。ハロウィンという欧米のお祭り、そしてアメリカの銃文化を背景にして起きたこの事件について、私たちが次の世代に伝えていくことも、私たちにできる異文化交流、異文化理解の一助になることではないかと感じます。

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