「異性の心を上手に透視する方法」
私が2012年にハワイで出会った”Attached”という書籍は、2016年にプレジデント社から翻訳出版されました。
(*出版に至るまでの経緯は、前編・後編にわけて記事を書いています)
アタッチメントは心理学の用語で、「特定の人との結びつき」を意味します。日本語の心理学用語では「愛着」と訳されます。
赤ちゃんの頃、一番にお世話をしてくれる人との関係を通して、アタッチメントを形成するのですが、このときのふたりの関係次第で、主に3つのアタッチメント・タイプ(安定型・不安型・回避型)のどれかになると言われています。まれに、不安型と回避型両方のタイプという人もいます。
アタッチメント理論が一般的に受け入れられはじめた当時は、主に親子の結びつきという観点で論じられてきましたが、大人になってからの人間関係にもアタッチメントは大きな影響を与えていることがわかってきました。
大人のアタッチメント
アタッチメント理論は主に発達心理学で非常に注目を浴びました。この理論が、大人になってからのパートナーシップの構築に影響しているのではないか?と考えたのが、”Attached”の著者のレバイン博士でした。
パートナーシップという関係にあるふたりの大人の間で、アタッチメント・タイプがどう影響するのでしょうか。前述の安定型・不安型・回避型という3つのタイプ別にみてみると、このような違いがあります。
安定型の人は、パートナーと親密になることは「普通のこと」だととらえていて、愛情表現もストレートです。恋愛のドキドキや駆け引きを味わうというよりは、信頼関係に基づいた落ち着いた関係にあることを好みます。
不安型の人は、パートナーとの親密さを常に感じていたい人で、少しでも「関係が脅かされたのではないか」と感じると、何も手につかなくなるほど動揺してしまいます。パートナーが、言葉や行動によって「ふたりの関係は大丈夫」ということを感じさせてくれるまで安心できません。
回避型の人は、パートナーと親密な関係になると、「自分の自由がなくなってしまうのではないか」ととらえる傾向があります。人とつながりたい自然な欲求はあるのですが、親しくなると、つい距離をとる言動をとったり、相手のあれこれが「気になる」といって、交際してすぐに別れてしまうこともあります。
一般的にはこのような大きな違いがあります。
アタッチメント・タイプの判別方法
より正確に自分のタイプを知るためには、診断シートを活用するのが一般的です。「異性の心を上手に透視する方法」に掲載されている診断シートにある数十問の文章を読んで、自分にあてはまるものに〇をつけていきます。
例えば、
・相手に対して自然に愛情表現ができる
・パートナーがいないと、人生で何かが欠けているようで不安になる
・パートナーに頼るのがためらわれる
といった文章があります。それぞれの質問はA、B、Cという振り分けがされていて、最後にA~Cのどれに多く〇をつけたかを数える・・というものです。
でも、この診断シートを使わなくても、だいたいこのタイプだろうとわかる方法があります。
それは、
「親密さを求めていて、積極的に言動に表せる」
あるいは
「親密になることに対して抵抗があり、避けようとする」
このふたつの選択肢があったとき、どちらの文章がより自分にあてはまるか?と考えることです。
もし前者の「親密さを求めていて、積極的に言動に表せる」がよりあてはまるのであれば、安定型もしくは不安型の可能性が高いです。「親密になることに対して抵抗がある」のは回避型の傾向です。
次に、安定型か不安型かの判断ですが、これは
相手の気持ちやふたりの関係について、不安になりやすいかどうか
で決まってきます。パートナーが自分を好きでいてくれるのかどうかということで常に気をもんだり、自分がなにかしてしまったのではないかと悩むことが多い人は、不安型の傾向があります。
安定型の人は、パートナーとの関係が親密になるのは自然なことととらえており、また相手の気持ちについてもそれほど思い悩むことはありません。パートナーを信頼し、どっしりと構えているイメージです。
ひとつ、興味深い点としては、誰とパートナーシップを組むのかによって、自分の傾向の現れ方が少し変わってくることもある、ということです。
例えば、私も夫も基本的には安定型なのですが、ふたりの組み合わせにおいては、私のほうがより不安型の傾向が強くなることがあります。
パートナーシップも人間関係のひとつなので、相手次第で自分の反応が若干変わってくることもあるのは自然なことでしょう。
パートナーのアタッチメント・タイプ
次に、パートナーのアタッチメント・タイプをどう見分けるか?という点をみてみましょう。
基本的には、自分のアタッチメント・タイプの判断と同様の考え方で、
相手は親密さを求めているのか?もしくは、親密になることに対して抵抗がありそうか?
ということをまず見ていきます。
これらは、普段の言動を観察することでわかってきます。例えば、連絡をマメにくれるか、次に会う計画を立てようとしてくれるか、約束を守るか(事情があり守れない場合には連絡や説明があるか)…という点において、パートナーはどんな行動をとっているでしょうか。
親密になりたいという気持ちが言動からくみ取れるようでしたら、安定型か不安型という可能性が高いでしょう。
安定型と不安型のどちらのタイプかを見分ける方法としては、一言でいうと「ふたりの関係について、穏やかな自信がありそうかどうか」ということになります。
不安型の人は、親密になりたいと思うあまり、例えば相手から連絡が少しでも途絶えると「自分が何かをしたからではないか」と不安でたまりません。何度も電話をしたり、メッセージをたくさん送るという行動がみられるかもしれません。
一方、安定型の人は、自分の求めている関係がどんなものかをよく自覚しており、相性が良い人とはうまくいくはずだと、どこかどっしりと構えているようなところがあります。少しくらい連絡が途絶えても、それほど不安にはならず、気長に待つことができたり、あるいは率直なコミュニケーション方法で、何かしっくりいかないことがあるかと、パートナーに質問することもできます。
冒頭の親密さについての質問で、「親密になることに抵抗がありそう」と思う場合には、回避型の傾向を疑ってみます。
回避型の場合、例えば少し仲良くなると、急に距離をおかれてしまうとか、ふたりの関係について公にしたがらない、ちゃんと説明せずにデートをすっぽかしたりするなどの言動があるかもしれません。
すべては「親密になる=自由がなくなる」と考えてしまう、回避型の思考の癖のためなのですが、それを知らずにいると、お付き合いする人は大変です。よほど自分をしっかりともっていないと、「自分のどこがいけないのだろう」と深みにはまっていきやすくなります。
パートナー候補にこれから出会うという方は、ぜひこれらの質問にあるような側面について、パートナーがどのような態度をとっているのか考えてみてください。大体の傾向がわかってくるでしょう。