濃いお付き合いの中で変わる自分
今の世の中の大部分の人は、社会の中で生きています。社会の中で生きるということは、お互いに影響し合う可能性を受け入れるということでもあります。
そして、ひとりの人間と深いパートナーシップを築こうとするのであれば、その人とはより親密な、濃い関係になるでしょう。
どこからどこまでが自分で、どこからが相手なのか。あることに対して「これはいい考えだ」と思うとき、実はパートナーの影響を受けてそう思うようになったということに気づかなかったり、以前は意識していたけど長い付き合いのうちに忘れて(=どうでもよくなって)しまったというようなことも起こるでしょう。
相手の影響を受け入れる
私たちの結婚生活に一番大きな変化を与えたイベントは子どもの誕生でした。私が結婚当初は子どもについて態度を決めかねていたということは以前にも書いた通りです。私が親になった理由は、パートナーが「可能なら子どもを育てる体験をしたい」という人だったから、といっても過言ではありません。「絶対に欲しくない」とまで思っていたわけではないので、私は、その点については彼に影響されることをよしとした、ということもできます。
もっと卑近な例を挙げると、彼と結婚するまで私は、たとえハロウィンでもコスチュームを着て楽しむということにあまり関心がありませんでした。
一方、彼はサンディエゴで行われるコミック・コンベンションなどで、好きなアニメのキャラの衣装を着たりしたい人でした。日本に家族で移住した後も、例えばNARUTOの映画を観に行くとなればせっかくなのでコスチュームを着ていきたがる、という感じです。
まったく自分のセルフイメージとは合わないな・・・と思いつつも、子どもたちは喜ぶし、彼らがドレスアップするのまでは止めないよ、という感じでやってきました。
そしてある年にはちょうどハロウィンの時期にアメリカから友達カップルが遊びに来ることになりました。彼らは夫に輪をかけてそういうお祭りごとには参加したい人たちだったので、自作のコスチューム持参で・・という話になり、それならと、表参道のハロウィン・パレードに、これまた苦労してチケットを入手して参加することに。
家族全員でコスチュームを着てハロウィンのパレードに参加するという、パートナーが彼じゃなかったらまずやっていないよ、ということを敢行しました。
変わるつもりがない人は結婚に向かない
私はよく、恋愛や夫婦関係でご相談にくる方に「相手を変えることはできないけれど、影響を与えることはできる」とお伝えしています。
私の例で言うと、子どもやコスプレにそれほど関心がなかった私が、彼の提案を最終的に受け入れたのは、それについて強い反対意見をもっていなかったからでもあります(いや、コスプレについては当初はかなり抵抗はありましたね…)。でも「絶対にこうしなければならない、あなたは変わらなければならない」と言われていたら、多分いまでも全力で抵抗していたでしょう。
夫にも今度、私から影響を受けた部分は何だと感じているのか聞いてみたいと思いますが、もし影響を受け入れた部分があるとすれば、それは同じようにそれほど強い反対意見をもっておらず、かつ、私も彼に変わることを強要しなかった部分なのかな、と感じています。お互いに自我が強いふたりなので、彼も意見を押し付けられることには強く抵抗しそうだからです。
一方で、例えば子育てについての方針の違いなど、お互いに強い信条をもっていて、妥協点が見いだせない部分については、今でもずっと話し合いを続けています。お互いがまあまあハッピーになるまでトコトン話し合うというのも、私たち夫婦がコミットしている部分ですが、まだまだその量が足りないようです。
結婚したい、あるいは結婚しなくても長期的なコミットメントのあるパートナーが欲しい、という人は、お互いに相手からの影響を受け入れることにオープンであるのかどうか、ということを考えてみてほしいと思います。
「1ミリも変わるつもりがないので、あなたが私に合わせてほしい」という人は、そういった関係には向いていないかもしれません。ふたりともがまあまあハッピーに仲良くやっていきたいのであれば、この関係によって自分はどんな風に変わるんだろうか?というところに好奇心を持てるような相手を選ぶ方が、関係が長続きする可能性が高いでしょう。