幼少期のころ選択した思い込み
「国際結婚カップルのコーチング事例<家事の分担>」で書いた、幼少期のころの思い込みが大人になっても自分の言動の動機になっているという点について、もう少し深堀りしてみます。
こちらのカップルのケイコさんの場合だと、「私が頑張らなければならない」「私は完璧でなければいけない」という思い込みがあり、無意識のうちに自分に厳しくしている部分がありました。
そのため、パートナーに少しでも「もう少し皿洗いをしてほしい」など、何かを言われると、責められたと感じたり、「完璧にはできていない自分」という自分に対するイメージから、苦しい思いをしていたのです。
思い込みが強化されていくプロセス
子どものころに、その当時の状況をなんとか生きていくために採用した思い込みが、成長する過程でさらに強化されてしまうことがあります。
そもそもの発端となる出来事を経験したあとに、思い込みを持ちながら似たような体験をしていくと、その思い込みを裏付けるような「証拠」につい目が行ってしまうのです。
ケイコさんの例で考えてみると、「自分が頑張らなければ・完璧でなければ」という思い込みを作ったきっかけの出来事は、お母さんが泣いているのを目にしたことでした。
その姿を見て「私が頑張らないといけないんだ」と感じたケイコさん。それ以降、気づかないうちにずっとその信条をもって生きてきたのです。
その結果、他の人からの評価を受けるということに激しい拒否反応を示すようになってきました。自分の仕事とされることについて「よかった」「よくなかった」という評価をされることが、この「私は頑張らなければ・完璧でなければ」という思いこみを刺激するため、そのような場面に置かれること自体が嫌になってしまったのです。
パートナーからの家事についてのコメントも然りで、そのためにそれについて冷静に話し合うことも難しくなってきました。
証拠探し
興味深いのは、実際には「よかったよ」とか「よく頑張っているね」というポジティブなことを言われていても、そこにはあまりフォーカスしていないことです。
思い込みが再生され、強化されていくメカニズムで興味深い点は、ある期待感をもったまま出来事を体験すると、その期待感を裏付けるような現象のみに無意識に集中してしまうため、良くも悪くも「期待はずれ」の部分があっても気がつかないでいる(あるいは、重要ではない情報として処理をしている)ことなのです。
ケイコさんも「あなたはもっと頑張らなければ」という思い込みを裏付ける証拠を無意識のうちに探しているので、それに反するコメントは印象に残らないのです。そのため「周りの人は私にとても厳しい」と感じていました。
気づきは変化の第一歩
再生のサイクルにいる間は、気づかないうちに思い込みが強化されていってしまうのですが、ひとたび「これは自分が作った思い込みだ」ということに気がつくと、そこから脱却して、別の選択をする可能性がでてきます。
そうすると、思い込みを強化するようなコメントだけにフォーカスせず、それ以外のことにも目を向けられるようになります。その結果、周りの人からのコメントをより客観的に受け取れるようになり、関係が改善することも考えられます。
この「再生のメカニズム」の大切な点は、自分の思い込みに気がついたからといって、それを変える必要はない、ということです。別の選択肢もあるけれど、敢えて自分は今までどおりの反応をするということも十分に起こりえます。
ただ、その場合には今までよりも主体的な選択になってきます。それまでのように「なぜだかわからないがイライラする」とか「悲しくなる」というのではなく、からくりを理解した上で、自分はどうしたいのかを考えられるようになるのです。
ケイコさんの場合にも、パートナーのコメントを「自分は完璧でなければいけないのに、ちゃんとやっていないと指摘されている」という反応以外の受け止め方はあるだろうか?という視点に変わってきます。
パートナーといつも同じことで喧嘩になる、と感じている人は、ぜひ自分の気持ちの奥底にある思い込みについて考えてみてください。
ひとりでは難しいという方には、コーチングセッションもご利用いただけます。