「#結婚しない」

2人の#(ハッシュタグ)

NHKのドキュメンタリー番組「2人の#(ハッシュタグ)」。

番組のサイトには、
「ひとつの#(ハッシュタグ)」を共有する2人が主人公のドキュメンタリー番組。同じ境遇・状況・考え方の2人のストーリーが同時進行で進んでいく。まるでSNSをブラウジングしているかのように、今の時代の若者たちが“どう生きようとしているのか”を見つめる、新しい感覚のドキュメンタリー番組」
と書かれています。

過去には「#就活やめた」というテーマで、就職ではない道を選んだ、お互いに知り合いではない2人について番組が放映されています。

今回の番組のハッシュタグは「#結婚しない」。ポリアモリー(複数の人を同時に好きになる人)のきのコさんと、結婚しないで出産することを決めた田村さんというふたりの女性の人生がとりあげられていました。

結婚しない自由

実は、きのう偶然にも、田村さんの感想を書いたFacebook投稿を目にしました。当事者である田村さんがどんな思いでこの番組を受け止めたのかも頭のすみにおきつつ、今朝、録画していた番組を観てみました。

観終わった感想はまず「時間が足りな過ぎた」ということ。

「あえて」結婚をせずに母になるということ、そしてポリアモリーという、どちらもまだ一般的に受け入れられているとは言いがたい言葉や概念のテーマを30分という短い時間に詰め込むのは、たとえおふたりに「結婚しないと決めている」という共通点があったにしても難しかったのでは、と感じました。

私は、結婚するかしないかは個人の自由だと思っています。「結婚していない親がいてもよい」と書くことさえおこがましい気がします。(私は結婚せずに親になってもいいじゃない、と思いますが、私が「いてもよい」と思うかどうか、本来は当事者には関係のない話だからです)

アメリカでは「パートナーはさておき、子どもを産みたい」という人はそんなに希少な存在ではないですし、実際に私の友達の中にもパートナー探しをやめて、子どもを産んだ人もいます。先日ご紹介した「マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ」もまさにマギーが絶対に母親になりたいという思いをかなえるストーリーでした。

ドラマや映画でよく使われる設定でもありますし、また現実世界でも、一般的には「自立したひとりの女性がどのように生きようと他人が口出しすることではない」という受け止め方なのではないでしょうか。(*あくまでも伝統的な家族という形にこだわったり、宗教上の理由から反対する人はいます。)

「選択的シングルマザー」という言葉

「選択的シングルマザー」は、おそらく「結婚して子どもが生まれたけど離婚した」という結果でシングルマザーになった人と区別する意図で作られた言葉のような気がしました。結婚せずに出産することを選んだ田村さん自身の言葉ではなく、番組の制作側の決定だそうです。

「結婚して子どもが生まれたけど離婚した」ことでシングルマザーになったのであれば、「(頑張ったんだから)仕方ない」と受け止められるけど、そうではなく、なんでわざわざひとりで産んでひとりで育てる「シングルマザー」を「選ぶ」の?という、世間の声を反映した・・・ということでしょうか。

田村さんご自身では「(選択的)シングルマザー」とは名乗っていないということを聞いて、なおさらその思いを強くしました。田村さんは、赤ちゃんの父親でもあるパートナーと一緒に住んでいるけれど、結婚する意志はないのだそうです。

「#結婚しない」というハッシュタグで番組を作るのだったら、もう少しその「結婚しないこと」についての思いを深堀りするような、別のアプローチがあったのではと感じました。そうではなく「結婚せずに出産することがどれほど特殊か」というニュアンスの描かれ方をしていたように思います。

「まるでSNSをブラウジングしているかのように、今の時代の若者たちが“どう生きようとしているのか”を見つめる」という番組のコンセプト。最近、他の番組でも、視聴者からのツイッターなどのフィードバックをリアルタイムで流すようなものも目にするようになりました。

でも、番組の中でキーワードがハッシュタグで出てきて、それがこのドキュメンタリーの主人公である人々に対するジャッジメントのように表示されるのはどうなのか、と感じました。実際にきのコさんとパートナーの映像にかぶせて、明らかな中傷の言葉がハッシュタグで大きく出てきたのには正直とても驚きました。

多様な生き方が受け止められる時代…なの?

田村さんは、結婚しなくても子どもを持つことは可能だよ、いろいろな生き方があるよ、ということを伝えられれば、と思って番組の出演を決めたそうです。出産という人生の一大イベントの過程でも密着取材を受けたりして、精神的にも物理的にもとても負担があったことは想像にかたくありません。それだけに、彼女の気持ちがきちんと伝わらないような形になってしまったのは残念だと思います。

また番組をみて田村さんに批判のメッセージが来たりもしているとのこと。

「自分には理解できないことをやっている人は間違っている」と思い込む人や、「一般的ではないことを、人知れずやっている分にはいいけれど、声高にアピールしないでほしい」と思う人が一定数いるのではないでしょうか。

「アリーナに立つ」という視点からいうと、田村さんは(そしてきのコさんも)間違いなくアリーナに立っています。不特定多数の人が観るテレビの番組に出演するなどは、アリーナの中でも大きな部類ではないでしょうか。本当に勇気ある行為だと思います。おふたりが、番組を観た人からの批判の声と真面目に向き合いすぎて疲れ切ってしまわないようにと願いつつ、アメリカ人が好きなこちらの言葉をご紹介します。

“Be who you are and say what you feel, because those who mind don’t matter, and those who matter don’t mind.”
「あなたのやっていることが気にくわない」という人はあなたにとってどうでもいい人だし、あなたにとって大切な人は、あなたを理解してくれる。だからおそれずに自分でいなさい、思っていることを言いなさい、という意味の引用句です(*出典には諸説あるようです)

付け加えるとすれば、本当に自分のことを大切に思ってくれている人たちは、たとえ自分の考え方を本当には理解できない(賛成はしない)としても、彼らなりの形で支えてくれるはずだと思います。

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